日本の司法制度の矛盾をえぐり出した

今日,最近公開された周防正行監督の「それでもボクはやってない」を見てきた。
日本の司法制度の矛盾をえぐり出した,まさに傑作だ。

性格は違うが,警察や検察と同じような仕事をしているオイラにとっては,とても考えさせられる映画だった。

「疑わしきは被告人の利益に」。
この刑事裁判の原理・原則は,映画の中でも,弁護士役の役所広司が口にするが,現在の日本の司法制度において,この理想の実現がいかに難しいか。それをよく描写している。

調書偏重主義と,警察官・検察官・裁判官の官僚主義や多忙化,被害を受けた人たちの屈辱感や絶望感。司法制度が抱える,諸問題・諸矛盾は,その社会のそれに直結しているように思う。

この映画を観て改めて思うが,司法制度の改革・改善は,この国の諸矛盾を解決する上でも非常に大きな課題だと思う。
取調べの可視化や,警察官・検察官・裁判官の飛躍的な増員,官僚主義を改善させる上で必要な諸改革,警察・検察にあってはキャリア制度の改革,裁判官にあっては最高裁の事務総局一極支配の改善などなどである。

「10人の真犯人を逃すより,1人の無辜を罰することなかれ」。
この思想が共有される社会になったとき,その社会は,現状よりも一歩進んだ,より人間が尊重される社会になっているのではないだろうか。