なんかズレてる

いつからだろう,日経新聞を読むようになったのは。
経済の動きを知るにはやっぱり一番だと思うし,特に真ん中の頁辺にある『経済教室』はいいですね。
ある程度のボリュームがあって,ちゃんとした専門家(主に大学教授)が書いているから,その精度は高いし,勉強になる。


ただねー,うんざりするような主張が目に付くのも多いんですよねー。
特に最近うんざりするのは,とにかく法人税率を下げろって議論ね(あぁそれと,円高を阻止しろという議論もかなり怪しいね。)。
これでもか,これでもかっていうくらい出てきますね。


オイラも,経済はインセンティブで動いているっていうことは少しは理解しているつもりだし,税制というものが企業行動に与える影響が大きいってことも理解しますよ。
だから,今よりも法人税率を上げろっていう議論には,若干疑問なしとしないところもあります,最近は。
だけど,日経がしきりに主張するように法人税率を多少下げたところで,今の日本経済や日本企業にどれほどの影響(プラスの)があるかは,かなり懐疑的ですね。
日本の企業が海外に進出するのは中国をはじめ新興国市場の台頭がめざましく,人件費,輸送費,関税,技術水準,国民性等々,非常に多くの要素が関係している訳で,もっと根本的には,世界経済の大きな構造変化に規定されているのであって,所詮日本市場なんていうのはたかが知れてるんですよ。
だから,その流れを多少の弥縫策で変えようと思っても変えられるものじゃないし(まぁ,日経は法人税率の引下げは弥縫策ではないと言うんでしょうが。),むしろ自然な流れに逆らうことになるんじゃないのかな。
大きな流れというのは,企業のインセンティブがそちらの方向に向いているということであって(しかもかなり強力に),それは今の世界経済の流れからいって自然なことなんだろう思うんだよね。


だから,法人税をいじくったところで日本経済にとってプラスに働くかどうかは非常に微妙で,ただ単に,企業の手元資金を若干増やす効果しかないのじゃないでしょうか(まぁ,日経の主張としては企業の利益を増やして投資環境を整備しろということなんだろうけどね。でも,そもそも投資というのは企業のインセンティブが第一であって,今,日本企業が国内投資を控えるのは,国内需要の減退と先行き不透明感があるからでしょうが。)。
この点で,普通の感覚を持っている人なら,そう考えるよなという記事が,昨日,当の日経新聞に載ってました。

オムロンの社長がインタビューに応える中でこんなことを言ってました。
「法人減税だけで日本企業が強くなれるでしょうか。仮に実効税率が40%から25%に下がったとして,利益が100億円の企業が,新たに手元に残った15億円を設備投資に回すとは限りません」
「税率だけど他国と比較しても無意味です。国際競争力は法人税率だけではなく,人件費をはじめ多くの要素が絡んで決まります。法人税率のような一部だけを取り上げるのは議論のやり方として公正でしょうか」


こういう当たり前の感覚を,日経新聞にも持ってもらいたいもんですね。
別に,日経の主張なんてどうだっていいけど,こういうのに影響される人もいますからね。


最近気になっていたので,書いてみました。
終り。